Blue dome

口からセンテンスが零れてくるのを拾ってもほったらかし。

2009-07

水たまりの矛盾

雨はおきらいですか
ぴたりぴたり
水たまりに雨粒落ちて
寄せては返す波紋の問いかけ
いいえいいえそんなことはありません

雨はおきらいですか

灰色雲の蓋 壜の底
つるり葉をすべる水滴
泣くように

おきらいいなのですね

いいえいいえそんなことはありません
したした
したした
したたって
泣くように

いいえ いいえと
傘に隠れた

あくる日 晴れて
泣き止んだ空
泣きはらして晴れた空
地上に残された水滴きらきら
けれど雨よ
泣いているあなたはいない
矛盾の水たまり 水鏡

雨よ雨
緑もみなもあいしているよ
泣かないでとはいえないけれど
けれど雨
また新しい傘を用意して
待っているから

いつだって待っているから

Mist

いつからか沈黙を望んで
浮き草のように日々に漂っているうちに
周囲に小さな切り取り線が
取り巻いてるのに気づいた

誰がそっと引き千切るのでしょう
この日常から
わたしの存在を

けれど
切り取られても
どこの景色にも影響しない
神様のパズルの1ピース

ええ、知っていたけれど
でも
そのときは君、ねえ
せめて手の届かないところで微笑って
わたしはそうして諦めるから

- - - - - - - - - - - キ リ ト リ - - - - - - - - - - -
生きた軌跡から
霧のように霧散する
- - - - - - - - - - - キ リ ト リ - - - - - - - - - - -

瞼を閉じて光を忘れて忘れられて
わたしの永遠はそうして閉ざされる

シロツメクサの葬送




シロツメクサの香りをかいでいた
君は斑入りの葉を見比べていた
シロツメクサの花を無造作に黙々と
引き千切るように摘んでいたとき
君は葉の茎から神経の糸を引き抜くようにして
ぶらぶらと揺らしたっけ
あたりの花を大量に毟って白い花で冠を作って君にあげた
君はいくつも葉っぱを散らした中から四葉のクローバーをくれた

いつかは傷んでしまう互いの贈り物
なにもかも無駄になる前に
最後は小川に流したね
絡み合った花は散ってほどけて
四葉のクローバーさえも小川にながした
ごまかしのお守りなんていらなかったから
結局のところふたりして
葬送の儀式のつもりだったっていうから
おかしくもなる


今もシロツメクサの香りをかぐと思い出すよ
あの冠を戴いた君
誇らしげで無邪気でとても残酷だったお姫様
あの日とっくに
四葉のクローバーもしあわせをくれないとわかっていた

君はわたしが恋をできない美しいお姫様

33




……
はじめての素数と大きな正方形で11で
もっと満ち足りた正方形になりました(※注1)

[注1]
1は独走態勢だし
2は誰の中にもありそうで
やっぱり素数らしい最初の数字は3
区切りよく現れる5と
忘れた頃に現れる(そうね、海王星くらい遠く離れた)7をとばして
特別すぎる1と1の組み合わせは
戸惑いを隠せない正方形
そのふたつで生まれた数って
運命的な気がする

もちろん
ただの数字状の話

定義〜よろこび〜

生きるよろこび
誰かと一緒においしいごはんを食べること

生きるよろこび
次の休みにあなたに会うこと

生きるよろこび
季節の移ろいを感じること

生きるよろこび
いつかそれらが終わるということ

定義〜生命〜

[誕生]
偶発的事象
[自己]
生命処理が進む上で、ひとつの"私"となった定数
[死]
生命処理の完了、自己意識の消滅
ただし周辺への影響波及により、メモリは解放されるまでは時間を要する

記憶の恋

思い出をさまよっていると
とてもとても好きだった一瞬だけが
濾過されて残っている
ああ恋ってあとからするものなのね
形骸にならないと気づけない
悲しく愚かにとうに終わった恋
――ただの記憶
私は確かにあなたのそばにいた

車窓

窓から眺める夜に浮かぶ線路は
ビルの灯りを反射して濡れて光っている。

うねりのびて
てらてらちらちら

すべる様に車両は濡れた線路を走る。
駅を間近に速度を落とした電車。
平行した隣の線路をはしるのは見知った顔を見た。
夢のなかで会う知らないはずの友人。
ひどく疲れた顔をドアに押し付けて、
そのぞっとするほど死んだ目。
そのまま濡れた線路に運ばれていった。

うねりのびて
てらてらちらちら

大きく揺れた車内に視界がぶれ、
急に車内の状況が窓に反射して焦点を結ぶ。
気づけばすれ違った電車に見つけたのと同じ死んだ目が一斉に、窓を見ていて
蒼褪めた死体が満員電車の中で揺られていた。
雨曝しにされた死体の濁った目を見られないで私は目を逸らした。
逸らし続けた。

減速する車両がするするとホームに寄りガスが抜けるようにドアが開いた。
忍び込む夜気の匂い。

窓硝子一枚隔てた向こう側、
明るい駅のホームでおりた人々は生者となり、
しっかりとした足取りにほっとする。

次の駅もその次の駅でも、
乗客は生き返った表情で去っていく

気づけばまばらな車両で揺られながら、
(いつからか
 うねりのびて
 てらてらちらちら)
窓の向こうを息をつめて覗いている。
(いつから雨に濡れた金属の上を、)
私はオレンジの外灯が傘を照らすのを目を凝らして待つ。
濡れているのは線路ばかりで、道はとっくに乾いている。
ビルの狭間から
月がくっきりと姿を現した。

今日はよく晴れていた。

思い出したときには最寄り駅のドアは閉じていた。

(てらてらちらちら
 濡れた線路を電車は走る
 雨を求めて)

そして漸く、自分が雨の日の幻かもしれないと思い到ったときには、見えぬ線路の継ぎ目でリズムを刻み、ただ車両は走る。

もう、窓の外は闇ばかり。

開演時間

繰り返し響くコーラス
否定形を禁じる明日を嘆く
実存の対義たる亡者の歌声

それは先日のこと
そう、私の存在がなかったどこまでも平行の『何処か』の昨日から
同じ歌が聞えた

 なぜここにいるの
 実存の否定
 なぜいないの
 不在の残骸

 は存在しない/するのに

相反する美しい調和
嘆きのコーラス歌劇

開きましょう、明日の人生劇場
否定形の抑止される明日、開演

傍観者

朽ちたドールの右目の硝子が
楽園が壊れていくのをみていた
鮮やかな色彩が失われて
モノクロームに閉じ込められる
景色は錆色を帯びて風化し
ぐずぐずと大地に崩れ落ちていった
楽園の死を慰めたのは灰色の蔓草
愛撫するように伸びて覆いそして
貪るように包み込んだ
彼女の乱れた髪を撫でる
きみは大丈夫、
華やかな笑い声も歌声も初めから
聴こえはしなかっただろう
なにも失われていない
そう、なにも手に入れていないのだから

錆の粉が涙となって零れ落ちる
トルソの奥で軋む歯車
楽園を悼むのは
褪せた襤褸を纏った彼女だけになった
はらはらと錆びた欠片を零す
人形の瞼をそっと下ろした
子守唄のオルゴール
聴き終える頃にはドールも楽園を忘れるだろう

残るのは朽ちて廃れた廃墟
退廃の美を褥にして

  表紙  時間を戻す

プロフィール

Author:青埜/蒼ノ
もう、青埜も蒼ノもごっちゃですが、同一です。すみません、住み分けが怪しくて…。
時々、消えたり現れたりします。
ブログ名は青い半球です。間違っても青いハゲ頭ではありません。


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