夜の浸潤
variation




夕立過ぎた黄昏
壊された雨雲
その隙間から夜が滲みだし
彼は空に問う
瞳から流れた
雨の行方を

08/10. 01:40 [ ] CM0. TB0 . TOP ▲
つなぐもの
vine


この脆い発条
あなたとわたしをつなぐかけはし

伸びて伸びて
きっと手をはなしはしない
掴んだ軸をただ絡めとって

けれどそれは
縋るためのただの反射で
怖がって手を離せないでいた

07/07. 23:44 [ ] CM0. TB0 . TOP ▲
イコライズ
冬の大三角形
いつのまにか見失って
どれだけ時間がたったのか

夏の大三角形
デネブとベガ
定規を持たない私
内角180度を描けず
路上の上に佇んで仰ぐ
夜空はただ何万光年と点滅する光となって

(意味のあるものが
こんなにも意味をなくすとは
思いもよらず立ち尽くす)


06/29. 23:48 [ ] CM0. TB0 . TOP ▲
ヴィオレッタ
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うつくしいヴィオレッタ
きみの細い首

指先には甘い絶望。いつだって夢をみることができないでいた。
彼女の澄んだ菫色の声は遠くから旋律となって響き、僕の体の中の水を揺らす。
まぶしい光の夏の庭。
けだるい午后。
きみの声が遠くから流れ着く。
なんという拷問。
耳朶の奥に棲む巻貝が永遠に記憶して同じ歌ばかりを嘆く。
もうすぐ彼女の翻るスカートと淡い色の髪ばかり映すようになるだろう。

五感を徐々に奪われて僕はいなくなる。
夢をみることができなかった僕は夢に喰われる。
残るのは絶望の残骸。

そして彼女。

ああ、愛らしいヴィオレッタ
その華奢な首
その美しい歌声をかき鳴らす楽器に
どうかこのピアノ線をかけておくれ

06/21. 23:33 [ ] CM0. TB0 . TOP ▲
ひとつためいき
わたしのこころが晴れるまで
なんていったいいつのことになるやら

06/21. 22:47 [ ] CM0. TB0 . TOP ▲
極光
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――現実と夢の境目はどこにあると思う?
戯れに問えば
グラジオラス色の空を指差した
あの空の向こうだと云う
あんな恐ろしい色の
この世の果てを飛び越えた
極楽に決まってる
――そうだよ
――極楽鳥が飛んでいそうな空じゃないか

いつか遠い南国に舞う鳥が描かれた図鑑をめくって
ああ、誰が極楽から連れ帰ったのだろう、と
話し合った

――あれは違うよ
――だってあれでは禍々しいほど美しい
あんな場所にいったのなら
夜にベッドに入った子らは
二度と戻ってはこないだろう
自分だって戻ってこない
きっと彼だって戻らずにずっと眺めているはずだ
あのオーロラのような世界から

距離は絶望的に遠く
けれど彼は平然と無視する
それがなによりも悔しい

手には今しがた摘んだ鈴蘭
賭けのようにおとした唇に
永遠を願った

05/21. 00:20 [ ] CM0. TB0 . TOP ▲
やまさんご
昔むかしの話

誰も分け入らない山の奥
どうしたことが山に不慣れな若者が
ふらりと迷い込んだ
ちょうど春もさかり
いっせいに周囲の花は開き

山にも珊瑚があるんだな
と笑った顔がとても素敵だったので
その木はいっぺんにその若者が
好きになりました

男はたいせつな人を失い
生まれ育った海にはいられなくなって
山のふもとの村で暮らすようになったらしい

あの海では自分の愛した人が眠っているのだ
と繰り返し聞かせるのを
ただ黙ってきいていました

やがて時はすぎ
愛した男は壮年をすぎ
髪は真っ白になり
肌はかさつき
腕は枯れ枝のようになりましたが
木はずっと男を変わらぬ気持ちで愛していました
けれど
それでも男は
やはり山の向こうを眺めていたのでした
男の妻の眠る海だろうと

自分はもう長くない
死ぬならあいつとできるだけ近くにいたいのだ
とその年の花の終わりに

その年はいつもにまして花がつき
枝を震わせて花びらを落とさないように
できるだけじっとしているのがやっとでした
その年から男は姿をみせなくなりました

日照りの年も山火事の年も
木は乗り越えて毎年花を咲かせました
『山にも珊瑚があるんだな』
本物の珊瑚がどんなものか知らなかったけれど

それももう昔々のこと

山の奥深く
その桃色の花は咲いています
たったひとりの面影を追いながら

花桃は枝ごと染めるように
薄紅の可憐な花を咲かせます

たったひとりの人間の若者を愛しているから
その花は決して子をなすことはないのだと
そんな話をはらはら落ちる花びらが
聞かせてくれました


04/06. 23:46 [ ] CM0. TB0 . TOP ▲
春惑い
あわく雲のかかった夜空
オリオンは何処かに消え
温度の高まった夜気に
花の気配が混じる


そろそろ
水銀灯の鳴く声が懐かしい季節


ジジ、ジジ、

ほら、夏の湿気と緑の匂いが

ジジ、ジジ、

高く上った満月に
落ちた影が踊りだして

夜に生きていける気がするのに、
と呟きながら


ジジ、ジ……

03/23. 23:35 [ ] CM0. TB0 . TOP ▲
アメオンナ
空をみあげれば
あたしの上はいつも曇り空
ついてまわる雲
青い空なんてみたこないくらいの
アメオンナ
暗い雨雲があたしの上空を囲う
あたしはあの雲の端っこにいけるかな
行って空の色、見ることができるかな


02/17. 00:47 [ ] CM0. TB0 . TOP ▲
空き地からもう一歩も踏み出せない
追いかけっこ
鬼に追われて強者と弱者の遊び

途中で追いかけてきた君がいなくなった
走っていた足をとめて

つかまえられて終わるため
つかまえてくれる鬼もいないのじゃ
なにもなにも終わらない

君がいなくなった
あの空き地で
僕はもう何処へ逃げ出せばいいのか
わからない

01/31. 21:31 [ ] CM0. TB0 . TOP ▲