蝶、ひらひら
あなたのこと忘れたわけではないのよ
もちろん愛してるわ
けれどいまはそちらにいけないの
まだこの心地よい空間にとどまっていたいのよ
あら、こちらにはまったく音沙汰のないですって?
ちゃんと心の領域は消えていないわ
いまでも愛おしいと思っているの
いまは遠くてそちらへ訪れることができないだけよ
ええ、私は気まぐれよ
いつだって移り気
関心は蝶のようにひらひらと舞い移る
同じ花に戻る日はいつの日か
けれど心にはスペースを残しているの
愛しているの全部
だけれど
だけれどね、だから人は愛せない
愛しているのは心を満たす絵や言葉や美しいものたち
自分で精一杯で制御もする気もなく
ならば私はきまぐれのまま人を愛せないでしょう
もちろん愛してるわ
けれどいまはそちらにいけないの
まだこの心地よい空間にとどまっていたいのよ
あら、こちらにはまったく音沙汰のないですって?
ちゃんと心の領域は消えていないわ
いまでも愛おしいと思っているの
いまは遠くてそちらへ訪れることができないだけよ
ええ、私は気まぐれよ
いつだって移り気
関心は蝶のようにひらひらと舞い移る
同じ花に戻る日はいつの日か
けれど心にはスペースを残しているの
愛しているの全部
だけれど
だけれどね、だから人は愛せない
愛しているのは心を満たす絵や言葉や美しいものたち
自分で精一杯で制御もする気もなく
ならば私はきまぐれのまま人を愛せないでしょう
君もいない永遠のまちで
君もいない永遠のまちで
どうして足跡ばかりがのこっているのか
自らの背後に足跡はないのに
かつてこの街の賑わいを奏でた
圧倒的な存在感はここにある
遠くへ
遠くへ
きたけれど
やっぱりここも幻だった
そう、君は嘆いたと、割れたステンドグラスが教えてくれた
君の足跡をたどるたび
その失望をともにする
幻は君
地面に耳をつけても
ただ無音の幻が亡霊となって砂塵を舞い上げる
祈りの言葉を切って
布で口元まで覆い砂を噛み締めて歩き出す姿はどこまでも孤独だった
できうることなら
その頼りなげな小さな背を
さすってあげたいけれど
君はとうの昔に通り過ぎた場所
こうしてただ追いすがるだけ
"あの、"
とまどいの滲んだ声に振り向けば
"戦いのないうつくしい国はありませんか"
幻がすがる目をしてたずねてきた
遠くの戦火から逃れてきたというかの人は
罅割れた唇から血が滲んでいた
どこか遠くを見る瞳はあまりに絶望していて
だからどこかの吟遊詩人がうたった噂を教えた
むかしむかしの御伽ばなし
罪のない
けれど
あまりに残酷なゆめものがたり
君が町を探しにいったと伝え聞いたのは
いつだったか
軽はずみな希望を口にした自分は
夢の中でいつまでも幻影を追いかけている
真実など告げられるはずもないけれど
ただもう一度ひきとめるため
今夜もどこかの町を彷徨う君の痕跡を追う
君もいない失望の町を
君の幻を求めて
どうして足跡ばかりがのこっているのか
自らの背後に足跡はないのに
かつてこの街の賑わいを奏でた
圧倒的な存在感はここにある
遠くへ
遠くへ
きたけれど
やっぱりここも幻だった
そう、君は嘆いたと、割れたステンドグラスが教えてくれた
君の足跡をたどるたび
その失望をともにする
幻は君
地面に耳をつけても
ただ無音の幻が亡霊となって砂塵を舞い上げる
祈りの言葉を切って
布で口元まで覆い砂を噛み締めて歩き出す姿はどこまでも孤独だった
できうることなら
その頼りなげな小さな背を
さすってあげたいけれど
君はとうの昔に通り過ぎた場所
こうしてただ追いすがるだけ
"あの、"
とまどいの滲んだ声に振り向けば
"戦いのないうつくしい国はありませんか"
幻がすがる目をしてたずねてきた
遠くの戦火から逃れてきたというかの人は
罅割れた唇から血が滲んでいた
どこか遠くを見る瞳はあまりに絶望していて
だからどこかの吟遊詩人がうたった噂を教えた
むかしむかしの御伽ばなし
罪のない
けれど
あまりに残酷なゆめものがたり
君が町を探しにいったと伝え聞いたのは
いつだったか
軽はずみな希望を口にした自分は
夢の中でいつまでも幻影を追いかけている
真実など告げられるはずもないけれど
ただもう一度ひきとめるため
今夜もどこかの町を彷徨う君の痕跡を追う
君もいない失望の町を
君の幻を求めて
孵卵器
君が一心不乱にベッドであたためている卵をみてごらん
孵るのは
夜な夜なう襲われる悪夢かな
なにも見えない手探りへの不安か
それとも明日への祈りの歌
(どれにしてもまずは耳をあててみないとね)
(そう、本当に生きてるの、って)
孵るのは
夜な夜なう襲われる悪夢かな
なにも見えない手探りへの不安か
それとも明日への祈りの歌
(どれにしてもまずは耳をあててみないとね)
(そう、本当に生きてるの、って)
うみほたる
眼球の底にある湖は
仄かに光を湛えて
"ごらん、あの魚たちの群れ
どこまでも深くもぐっていく"
静かな内の声音に
そっと内面をのぞきこむけれど
墨色のおぼろな魚影しか見えない
天の月を仰げば光さしこみ
たゆたゆと水面を揺らす
静寂な水
わたしはそこにゆきたいのだけれど
夢に瞼を閉ざしても
路は開かず
自らの内にある水辺に
どうしてもゆけぬ
明滅する鬼燈のごとき蒼白い光は
きっとずっと底に住む
わたしの魂のうみほたる
わたしはそこにゆきたいのだけれど
仄かに光を湛えて
"ごらん、あの魚たちの群れ
どこまでも深くもぐっていく"
静かな内の声音に
そっと内面をのぞきこむけれど
墨色のおぼろな魚影しか見えない
天の月を仰げば光さしこみ
たゆたゆと水面を揺らす
静寂な水
わたしはそこにゆきたいのだけれど
夢に瞼を閉ざしても
路は開かず
自らの内にある水辺に
どうしてもゆけぬ
明滅する鬼燈のごとき蒼白い光は
きっとずっと底に住む
わたしの魂のうみほたる
わたしはそこにゆきたいのだけれど
屍
いつから腐りかけていたのか
濁った水が眼球の中にたまっている
流してしまおうとしたが
泣こうとしても涙が出てこない
ただ
自己の否定と卑下と絶望の塊が
わたしをころしていく
濁った水が眼球の中にたまっている
流してしまおうとしたが
泣こうとしても涙が出てこない
ただ
自己の否定と卑下と絶望の塊が
わたしをころしていく
水たまりの矛盾
雨はおきらいですか
ぴたりぴたり
水たまりに雨粒落ちて
寄せては返す波紋の問いかけ
いいえいいえそんなことはありません
雨はおきらいですか
灰色雲の蓋 壜の底
つるり葉をすべる水滴
泣くように
おきらいいなのですね
いいえいいえそんなことはありません
したした
したした
したたって
泣くように
いいえ いいえと
傘に隠れた
あくる日 晴れて
泣き止んだ空
泣きはらして晴れた空
地上に残された水滴きらきら
けれど雨よ
泣いているあなたはいない
矛盾の水たまり 水鏡
雨よ雨
緑もみなもあいしているよ
泣かないでとはいえないけれど
けれど雨
また新しい傘を用意して
待っているから
いつだって待っているから
ぴたりぴたり
水たまりに雨粒落ちて
寄せては返す波紋の問いかけ
いいえいいえそんなことはありません
雨はおきらいですか
灰色雲の蓋 壜の底
つるり葉をすべる水滴
泣くように
おきらいいなのですね
いいえいいえそんなことはありません
したした
したした
したたって
泣くように
いいえ いいえと
傘に隠れた
あくる日 晴れて
泣き止んだ空
泣きはらして晴れた空
地上に残された水滴きらきら
けれど雨よ
泣いているあなたはいない
矛盾の水たまり 水鏡
雨よ雨
緑もみなもあいしているよ
泣かないでとはいえないけれど
けれど雨
また新しい傘を用意して
待っているから
いつだって待っているから
Mist
いつからか沈黙を望んで
浮き草のように日々に漂っているうちに
周囲に小さな切り取り線が
取り巻いてるのに気づいた
誰がそっと引き千切るのでしょう
この日常から
わたしの存在を
けれど
切り取られても
どこの景色にも影響しない
神様のパズルの1ピース
ええ、知っていたけれど
でも
そのときは君、ねえ
せめて手の届かないところで微笑って
わたしはそうして諦めるから
- - - - - - - - - - - キ リ ト リ - - - - - - - - - - -
生きた軌跡から
霧のように霧散する
- - - - - - - - - - - キ リ ト リ - - - - - - - - - - -
瞼を閉じて光を忘れて忘れられて
わたしの永遠はそうして閉ざされる
浮き草のように日々に漂っているうちに
周囲に小さな切り取り線が
取り巻いてるのに気づいた
誰がそっと引き千切るのでしょう
この日常から
わたしの存在を
けれど
切り取られても
どこの景色にも影響しない
神様のパズルの1ピース
ええ、知っていたけれど
でも
そのときは君、ねえ
せめて手の届かないところで微笑って
わたしはそうして諦めるから
- - - - - - - - - - - キ リ ト リ - - - - - - - - - - -
生きた軌跡から
霧のように霧散する
- - - - - - - - - - - キ リ ト リ - - - - - - - - - - -
瞼を閉じて光を忘れて忘れられて
わたしの永遠はそうして閉ざされる
シロツメクサの葬送

シロツメクサの香りをかいでいた
君は斑入りの葉を見比べていた
シロツメクサの花を無造作に黙々と
引き千切るように摘んでいたとき
君は葉の茎から神経の糸を引き抜くようにして
ぶらぶらと揺らしたっけ
あたりの花を大量に毟って白い花で冠を作って君にあげた
君はいくつも葉っぱを散らした中から四葉のクローバーをくれた
いつかは傷んでしまう互いの贈り物
なにもかも無駄になる前に
最後は小川に流したね
絡み合った花は散ってほどけて
四葉のクローバーさえも小川にながした
ごまかしのお守りなんていらなかったから
結局のところふたりして
葬送の儀式のつもりだったっていうから
おかしくもなる
今もシロツメクサの香りをかぐと思い出すよ
あの冠を戴いた君
誇らしげで無邪気でとても残酷だったお姫様
あの日とっくに
四葉のクローバーもしあわせをくれないとわかっていた
君はわたしが恋をできない美しいお姫様
33

……
はじめての素数と大きな正方形で11で
もっと満ち足りた正方形になりました(※注1)
[注1]
1は独走態勢だし
2は誰の中にもありそうで
やっぱり素数らしい最初の数字は3
区切りよく現れる5と
忘れた頃に現れる(そうね、海王星くらい遠く離れた)7をとばして
特別すぎる1と1の組み合わせは
戸惑いを隠せない正方形
そのふたつで生まれた数って
運命的な気がする
もちろん
ただの数字状の話






